2013年9月14日土曜日

【タンタンの暴言】自由にゲームを作るということ



最近のポリポリでは、同人ゲームインディゲームというワードが大人気。


ディベート形式で話をすると、どうしてもそれらの対立軸として《商業ゲーム》というワードが登場します。

僕はまさにその《商業ゲーム》側の人間なのだけど、普段から特別意識して商業としてモノを作ろうとしているわけではなく、多くの人に楽しんでもらえるゲームを作っている意識しかないので、カテゴライズされて不意に「丹沢は商業の人間」と言われると、「へ?あ、そうなんだ!?」と違和感を感じたりするわけです。

嫌な言葉だね、商業。日本人は心の奥底で「お金とクリエイティブは相容れないもの」みたいに感じてるところがあるので、どう頑張っても、悪役っぽい見え方をしてしまう。同じ画家でも、清貧を貫いて最後は孤独に死んでいった…というほうが、人気が出て豪邸を建てた、というより価値があるように語られることが多い。


僕としては、



同人 ⇒ 利己的ゲーム

商業(&インディ) ⇒ 利他的ゲーム




と呼ぶことを提案したいと常々考えているのだけれど、まあ、言葉の定義を話しだすと終わらないので、今回は渋々(笑)《商業ゲーム》という言葉を使っていこうと思います。


さて、商業ゲーム派閥の丹沢としては、まず最初に自分の立ち位置を明確にしておきたいと思います。






商業ゲーム大好き!!!

愛してる!!!!!!!






・・・だってさ、




僕が大好きなストリートファイターバーチャロンも、

ゲーム会社に入るきっかけになったラクガキ王国も、

30代になって涙を流した風ノ旅ビトも、





全部商業だもん





商業ゲームなしに今の僕はいないし、商業ゲームという世界があるお陰で、僕も嫁さんも毎日ご飯を食べることができています。僕は、生活の糧となるお金を得ること=自立して生きること だと強く思っているので、自分の大好きなゲームを作って生きていることを、心から幸せだと思っています。だって、ゲーム会社が1つもない国に生まれたら、ゲーム業界に入る前のハードルがすごく高くなるでしょ。日本に生まれて、ゲーセンのゲームもコンシューマのゲームも常に最新のモノに触れて育ったからこそ、今こうしてゲームでご飯食べれているわけです。


もちろんそれは僕の生き方なので、押し付けたり誰かの生き方を否定したりするつもりはないですが、僕自身は、別の仕事で生活の糧を得ながら同人ゲームを作るという器用なやり方はできないんじゃないかと思っています。それは僕にとってすごくハードルの高い生き方に感じます。


よく言われるのが、「商業は自由がない」という言説ですが、僕にとっては、「商業こそが自由」です。


そう思う理由は大きく3つあります。


1つ目は時間的な自由

別の仕事で生活の糧を稼ぐ必要がない、つまり、一日中ゲーム作りに集中できる。
また、オフィスや開発機材の確保、法的なサポートや、製造、営業、宣伝など、ゲーム以外のことに割く時間を極限まで圧縮できる。


2つ目は人的な自由

自分が作りたいものに欲しい開発スタッフ、専門のエンジニアなど、必要であればプロフェッショナルたちがすぐ横にいる(または雇い入れるのが容易な)環境。仲間を集めるために多くの時間を割かずに済む自由。


3つ目は金銭的な自由

個人では出せない規模の開発費(=人的リソースだったり機材だったり)をかけてゲームを作ることができる自由。


もちろんこの3つをフルに活用するには、社内プレゼンを通すだとか、ちょっとした手間はかかりますが、僕にとっては、すべての周辺準備を自分でするよりも、そのほうがずっと簡単だし速いと思っています。

例えば、アーケード向けに専用筐体を使ったゲームを作りたいと思ったら、メカニックや、生産ラインの確保、流通や運営開始後に修理対応するメンテナンスチームが必要になりますし、これを個人で全部まかなうのは難しい部分がある。まあ、ぶっちゃけ、不可能

だから僕は、最初からそういったゲームを作ることができない環境よりも、やろうとおもえば作れる環境のほうがずっと自由だと思うのです。

自分が人生で何本くらいゲーム作れるかなと考えた時、僕はなるべくゲームを作ること以外に時間を使いたくないし、考えついた面白いものを環境のせいで実現できないのは嫌なので、望んで商業ゲームの世界にとどまっています。


アラブの石油王がきまぐれで「お前の好きなモノを好きなだけ時間とお金をかけて作っていいよ。気が乗らなければ作らないくてもいいよ。それでも生活は保証するよ」とでも言ってくれない限り、多分僕は一生、商業ゲームの世界で踏ん張るんだろうなぁと思います。それが僕の一番気持ちの良いバランスだからです。


前回の放送のラストでエンドレスシラフさんに「将来のことは自分で考えろ!」的な突っ放し方をしておきながらも、判断材料として、商業側の世界についてもきちんと説明しておかないとフェアじゃないよなと思い、僕の考えを書いてみた次第です。


ダラダラ書いてしまったけれど、ひとことでまとめると




商業は「自由でありたい」と
願えば凄まじく自由になれる世界


だということです。

確かにちょっとしたハードルはある。けど、その先には、個人では見られないレベルの夢が広がっているのです。



Welcome、若人!





・・・というわけで、今回の「タンタンの暴言」は、千葉大学の可愛い後輩、エンドレスシラフの皆さんに向けた、丹沢からの贈る言葉、もとい、余計なおせっかいでした!老害力!(笑)



ではまた来週!



8 件のコメント:

  1. こういうまっすぐな話をするタンタンいいな!
    まぶしいぜ、商業の力!!

    タンタンのいう商業は非常に魅力的だな!
    たんたんは、そこらへんをカロヤカでうらやましい!

    ••••しかし、そのカロヤカな裏側に
    大変な努力がありそうな気もするので、そこらへんを
    ポリポリクラブで語り尽くして欲しいじぇ!!

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    1. まぶしいのは世界そのものではなく、常に個人だと思うのです。

      同人の世界で輝いてるZUNさん。
      オニオンゲームズで輝く準備をしている木村さん。

      まぶしいのは、世界そのものではなくて個人。

      輝いている人がたくさんいると、その世界は眩しく見えるんじゃないかと思います。だからこそ、僕は個人を離れて「業界」を分けるのに違和感をおぼえるのかなぁと思います。

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  2. ゲーム=プログラム言語の蓄積によるユーティリティ、と考えると、
    ゲームという創造物は、最初から利他的なものであるはずなんですけどね
    同人ゲームが利己的なものになってしまうのは一体何故なんでしょうねぇ…

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    1. 同人ゲームは「自分が楽しいこと」を一番上位の判断基準に据えた上で、たまたまそれを楽しめる人がいれば楽しめば良い(それが多くても少なくてもあまり気にしない)というスタンスで作るゲーム。これを僕は『利己的』と考えています。

      商業ゲームは「特定のユーザー(例えば小学校低学年男子向け、というようなターゲットユーザー)」が楽しめることを最上位の判断基準とし、自分自身が楽しめるかどうかは必須ではないスタンスで作るゲームです。自分自身がそのターゲットに含まれる場合も多いですが、そうでない場合もあるので『利他的』と名づけてみました。

      つまり、決して「利己的」であることが残念、という話ではなく、別のスタートラインで作られたゲームを言葉の上で正確に分類したいと思った次第です。

      むしろ同人ゲームを作るからには極限まで「利己的」であるべきだと思います!

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  3. (あ、そういえば、今一番遊んでいるゲームは自分も商業だった)

    悪役大好きなボクちんは、
    悪役はヒーローなんかより
    数億倍かっこいいと思っちゃう!

    悪役主役よ
    モテモテよ

    やられたって〜
    逆境だって〜
    なんとも なーいなーい ♪


    っと



    そいうえば 宮本茂さんは

    「商品を作る」意識を持つことで
    自分は「とても楽になれる」と、
    『ピクミン3』のインタビューで話していたっけ

    あのインタビューは
    いつかどこかで タンタンに読んでほしいズラ・・

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    1. 「商品を作る」意識を持つことで楽になれる…

      って、どういうことだろ。宮本さんのインタビュー読みたいです。

      僕らは資本主義社会の中で生きていて、お金と全く関係ないところで自己表現としての作品を作り続けるということはすごく孤独だと思うことはあります。「商品を作って」いるからこそ外とつながっていて、ユーザーさんと繋がっていられるので、そういう意味で楽になれると感じたことはあるなぁ。

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  4. 宮本さんも丹沢さんも、大企業で出世して強くなって「自由」になった人ですよね…
    途中でドロップアウトした、木村さんや太田さんは弱い人なんでしょうか…

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    1. ゲームをどこでどう作るかにヒエラルキーはないですよ。

      僕は商業が一番自分のやりたいことをできる場だと思ったからそれをやっているし、太田さんが同人という世界を選んだのは太田さんのベストなのだと思うし、木村さんがオニオンゲームズでやっていることも、考えた末の木村さんのベストだと思います。

      それは単に「自分の活躍の場」のチョイスに過ぎないというのが僕の考えです。

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